過去の株価変動の傾向から見る、今すべき備え

現地時間の2月24日早朝、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始しました。

これにより、日本株は大きく売り込まれ1月下旬の安値を割り込み、日経平均株価は一時2万5,775円64銭まで下落。2月24日の日経平均株価は478.79ポイント(1.81%)下落し、2020年11月以来の安値となる2万5970円82銭で取引を終えました。

世界各国で株価や通貨の下落が起きるなど、世界の株式市場は揺れています。

今後も侵攻の長期化や拡大によっては一時的な下落幅は予想以上に広がり、経済不安が長期化する可能性も少なくありません。

ニュースやWebサイトなどでさまざまな予想が飛び交うなか、「株といった資産は大丈夫?」「どのような貯蓄や資産運用を選ぶべき?」と不安になる方もいるでしょう。

そこで今回は、過去の侵攻や戦争時に起きた株価変動の傾向をもとに、今後の経済の行方や私たちが今すべきことをお話しします。

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ロシアのウクライナ侵攻による経済への影響と各国の動き

まずはロシアのウクライナ侵攻が経済に及ぼした影響や、各国の動きを確認しておきましょう。

ロシアのウクライナ侵攻が経済におよぼす影響

ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まるにつれ、侵攻直前の営業日である2月22日までの2週間で日経平均株価は4.1%下落しました。

このように各国の株式市場が急落する一方、原油や金が急騰。

これは、ロシアが世界全体の生産量のうち原油13%、ガス生産17%を占め、さらにパラジウム、プラチナ、金等金属の主要生産国となっているためです。

原油に関しては、ロシアはサウジアラビアに次いで第2位の石油輸出国で、天然ガスで言えば輸出第1位となっています。(国連貿易開発会議_2020年の統計より)

原油の輸出は主にヨーロッパとなっており、ロシアからの輸出が減少すれば大きな打撃となり、需要増加によってエネルギー価格は上昇し続けるでしょう。

また今回の侵攻は、小麦価格といったエネルギー価格以外にも影響を与えています。

ロシアのウクライナ侵攻が開始した2月24日に、シカゴ商品取引所の先物市場(※)では小麦相場が値幅上限まで急騰。

ロシアの小麦輸出量は世界全体の輸出の17.8%と世界第1位(国際連合食糧農業機関より)であることから、今後小麦の供給に関して懸念されています。

このように今回のロシアの軍事侵攻が与える影響は大きく、社会や経済にまで及んでおり、当面は不安定な状況が続く見通しです。

(※)シカゴ商品取引所の先物市場は穀物価格の国際指標とされている

各国がロシアに経済制裁を発動

金融制裁としては、2月26日に欧米が国際決済システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの銀行を排除すると発表。

SWIFTから排除されると、欧米との輸出入が困難になります。

他にも、アメリカのクレジットカード会社であるビザとマスターカード、アメリカン・エキスプレス、オンライン決済のペイパル(アメリカ)がロシア国内での取引停止を発表。

大きなニュースになったマクドナルド847店舗すべてが閉鎖となったこと以外にも、アップル(アメリカ)やイケア(スウェーデン)、動画配信のネットフリックス(アメリカ)といった複数の企業がすでにロシアでの事業を停止しており、何百社もの国際企業がロシアから撤退しています。

ルイ・ヴィトンのほか、クリスチャン・ディオールやジヴァンシィ、ブルガリなどを傘下にもつLVMH(フランス)や、プラダ(イタリア)などの高級ブランドもロシア国内の店舗を閉鎖しました。

このように各国がロシアに対し制裁を行っており、今後のロシアの動き次第で追加制裁も行われる可能性があります。

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過去例から見る株価変動の傾向と、今後の見通し

これまでにも、1990年8月のイラクによるクウェート侵攻(湾岸戦争)や2014年ロシアによるクリミア侵攻、2015年に行ったシリア空爆など、他国への軍事侵攻や国際戦争は経済に大きな影響を与えてきました。

ここからは過去の軍事侵攻や国際戦争を例にあげ、その時の状況と合わせて、今後の見通しを説明します。

1990年8月 イラクによるクウェート侵攻(湾岸戦争)

1990年8月2日イラクによるクウェート侵攻が起き、1991年1月17日に多国籍軍によるイラク空爆によって湾岸戦争が始まりました。

湾岸戦争が起きる前年1990年11月29日、国連が武力行使容認決議を可決。

これにより開戦への緊張が高まり、日経平均株価は開戦1カ月前の12月17日から開戦前日まで6.8%下落しました。

しかし開戦後の株価は反騰しており、日経平均株価は開戦前日の1991年1月16日から1カ月後の2月18日まで16.9%上昇したのです。

開戦してすぐに反騰したのは、イラク南部の軍事施設が空爆開始すぐにほとんど破壊されたことで、戦争終結が近いと予想されたことも大きいでしょう。

その他のロシアによる過去の侵攻・空爆

近年のロシアによる周辺国への侵攻・空爆には以下があります。

2008年 南オセチア紛争(グルジアとロシアの間で起こった、南オセチア自治州を巡る軍事衝突)
2014年 クリミア侵攻(ロシアがウクライナ領クリミア半島に侵攻し、その後併合)
2015年 シリア空爆(アサド政権を支援した空爆)

これらの侵攻・空爆前後の株価の動向をみていきましょう。

引用:東洋経済オンライン

※侵攻・空爆前日の日経平均株価の終値を100とする

これらが起きる前後の株価の動きとしては、今後の不透明感が強まることで侵攻や空爆日の前日に向けて株価が下落する傾向となりました。

侵攻後の株価をみてみると、南オセチア紛争とクリミア侵攻はほぼ横ばいとなっています。

◆南オセチア紛争
南オセチア紛争開始後に株価の動きが横ばいとなった背景には、以下があります。

・軍事攻撃は短期終結したものの、その後ロシアが南オセチアとアブハジアの独立を承認したことに国際社会から大きな避難があり、事態の終結が見られなかった。
・同年9月15日に世界的な金融危機であるリーマンショックが発生した

このように、ロシアの侵攻とは異なる要因により長期的に株価はなかなか回復しませんでした。
◆クリミア侵攻
クリミア侵攻開始してしばらくは横ばいでしたが約1年後ほどの長期でみると、経平均株価は25.9%上昇しています。ロシアはクリミア半島を武力的に併合したことで、欧米から入国制限や資産凍結といった制裁を受けました。しかし、戦闘が集結し状況が落ち着いたことで不安材料がなくなると、株価は上昇したのです。
◆シリア空爆
空爆によりアサド政権が持ち直したことで、ロシアが及ぼす中東地域への影響が高まったものの、欧米から大きな制裁を受けることがなかったこともあり、シリア空爆後に株価は上昇しました。

戦争開始前は株価下落、その後回復するケースが多い

ここまで、過去の侵攻や戦争前後の株価の動向を見てきました。

戦争の長期化や各国の経済制裁によっては、今回のロシアによるウクライナ侵攻がどれくらい株価へ影響するのかわかりません。

しかし、南オセチア紛争後のリーマンショックが起きた時のような侵攻とは別の要因が起きなければ、株価の下落は一時的と考えられるのです。

過去の例を見ると、有事直後に大きなマイナスとなっても長期的な視点で見れば経済は着実に拡大し続けています。

このように、戦闘の長期化や経済危機があったとしても軍事侵攻や戦争といった有事での株価の大幅な下落は一時的で、有事が収束すると株価が回復するケースがほとんどだといえるでしょう。

今だからこそすべき3つのこと

連日ロシアのウクライナ侵攻に関するさまざまな情報やニュースが流れている中、資産運用に関して心配になる人もいるでしょう。

しかし、焦りは禁物です。

侵攻の終結や今後が予想しにくい状況であるものの、「今すべきこと」や「着眼するポイント」がわかれば、資産を着実に増やすことができます。

ここからは、ポイントを3つお話しします。

(1)ニュースだけで株価予測をしない

テレビや新聞、雑誌、インターネットなどから、ロシアのウクライナ侵攻に関するさまざまな情報を得ることが可能です。

情報の中には事実のみを伝えるものから、専門家やインフルエンサーまでさまざまな人たちが持論を述べているものまであります。

重要なことは「入手した情報だけ見て株価の先行きを判断してはいけない」ということです。

事実のみを伝えるニュースといっても、情報を発信する側が取捨選択しているため、事実をすべて網羅しているとは限りません。

専門家やインフルエンサーまでさまざまな人の持論は、ほぼ予想だといえます。

今後何が起こるのか、どのように株価が動くのかを正確に予想することはできないと理解した上で、株価の先行きは「株価」を見て判断しましょう。

(2)大きく下がったからといってすぐに売らない

近年、つみたてNISAやiDeCoを利用した長期積立投資をする人が増えています。

個人で行っている方が多く、何らかの要因で下落が起きると不安になったり焦ってしまい、売ってしまう方もいます。

実際、リーマンショックや新型コロナウィルスの感染拡大によって短期間で大幅に下落した際、売ってしまった方も多かったようです。

しかし売却してしまったことで、その後の戻り局面で得られるはずだった利益が得られず、投資をやめてしまった人も少なくありません。

株価はさまざまな要因で日々変動します。

大きく下落したからといってすぐには売却せず、利益を着実に得るために長期目線で積み立てていくことが大事です。

(3)長期積立+分散する

着実に資産を増やし最大のリターンを得たいなら、「長期積立」と「分散」の2つがポイントです。

ここ数年であれば新型コロナウィルスの拡大やロシアのウクライナ侵攻などが、世界経済に大きな打撃を与えています。

これまでにもさまざまな国際戦争や感染症の拡大、リーマンショックのような金融危機が起きた際に株価は大きく下落したものの、時間をかけて回復しその後成長しています。

資産運用を継続し続けることで、しっかりと利益を得られるのです。

もちろん、資産運用には損をするリスクもあります。

リスクが大きいのは、ひとつの商品や会社、国に集中して投資している場合です。

例えば、リーマンショック時に株価は暴落したものの、安全資産とされる金の価値は上がりました。

今回のロシアのウクライナ侵攻でも、株価は下落しましたが原油やガスといったエネルギー価格は急騰しています。

このように、投資先を世界中のさまざまな商品や会社、国に分散しておけば、あるひとつの資産が下落してしまってもそのほかの資産が違う値動きをするため、リスクを最小限に抑えることができるのです。

長期的な資産形成を視野に入れて貯蓄や積立を継続し、資産価値の下落リスクに備えて資産を分散しておきましょう

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まとめ

ロシアによる侵攻が長期化すると、さらに市場が混乱する可能性があります。

しかしこれまでに起きた侵攻・戦争をみれば、短期的には株価が大きく下落するものの、その後回復し成長しており、今回のロシアのウクライナ侵攻でも、同じことが言えるでしょう。

大事なことは、短期的なアップダウンに一喜一憂するのではなく、長期目線で着実に資産を増やすことです。

そのためには短期的に売り買いを繰り返すのではなく、リスクを回避するために分散しこつこつと貯蓄をしていくことが必要になります。

老後や万一の備えのために、まずはご自分のできる範囲で積み立てを始めてみましょう。

今後必要になる老後資金や教育資金、万一の場合への備えはできていますか?

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藤本弘之(Hiroyuki Fujimoto)
マレーシア在住の独立型ファイナンシャルアドバイザー。 関西学院大学卒業後HRサービスを提供する企業へ入社し、企業の「人」に関しての将来設計を主として担当。現在はQuestor Capital Ltd.に所属しながら、主にマレーシア・タイ・日本に居住されている方を中心に金融機関の紹介だけでなく、契約から契約後の運用、ファンドの組み替え、入出金まで資産形成・資産運用に関わるすべてをサポート。現在4歳になる男の子のパパ。趣味はサウナとキャンプ。

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